日本文化のエッセンスは、次の三つの歌に尽きるのではないかと思う。
ひきよせて結べば柴の庵(いおり)なり 解くれば元の野原なりけり
何事のおはしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる
散ればこそいとど桜はめでたけれ うき世になにか久しかるべき
インドを含め、ユーラシア大陸の主要な文化が「石の文化」であるのに対し、日本は「木の文化」のチャンピオンである。日本の家は「木と紙の家」だと言われる。壁面がない。障子やふすまで部屋を仕切り、それがドアともなる。木と紙だから、人の住んでいる間こそ家だが、住まなくなれば朽ちて土に還る。
石と違い、木の建物は残らない。この点でおもしろいのは伊勢神宮の「遷宮(せんぐう)」の制度である。20年ごとに社殿を建て替えるのだ。制度となったのは690年だそうだから、そのときから数えても、「1300年前の木造建築」が残っていることになる。新しくて(20年未満である)、古い(7世紀の姿そのまま)。変わりつつ、変わらない。ここに日本文化の特質を見るべきだろう。
日本人は地面より高いたたみの上で暮らしているので、家に入るときははきものを脱ぐ。この点で欧米や中国の「土足文化」と異なる。インドや中近東の靴を脱ぐ人々に近い。石の文化であっても。